波面整形顕微動的光散乱法によるソフトマテリアルの不均一性の可視化


廣井 卓思  芝浦工業大学 工学部 准教授


 自然科学における空間的な階層構造は、物質の構造を理解する上で基本的かつ重要な考え方である。例えば、多くの金属は10~100 μm程度の大きさの金属組織から構成されている。原子組成の全く同じ合金でも、熱処理などにより異なる組織構造を持つと、マクロスケールにおける物性が全く異なる。そのため、マクロスケールの物性とミクロスケールの構造の相関が精密に調べられてきた。
 ソフトマテリアルにおいては、マクロスケールの物性とミクロスケールの構造の相関を見出す上で、マイクロメートルスケール=メソスケールにおける不均一性の重要性が知られているものの、ソフトマテリアルにおけるメソスケール構造を定量的に描写する手段が存在しないため、現時点では定性的な理解に留まっている。本研究計画では、応募者独自の計測技術である顕微動的光散乱法に、天体分野で発展した補償光学の考えに着想を受けた入射光の波面制御システムを組み込んだ新たな計測法、波面整形顕微動的光散乱法を開発し、ソフトマテリアルのメソスケール不均一性の解明に挑む。