多重散乱体での光渦の伝搬解析と拡散蛍光イメージングへの応用


西村 吾朗  北海道大学電子科学研究所 助教


深部生体組織(>1cm)でがん組織など患部を蛍光標識しそれを3次元可視化することは極めて重要である。しかし、生体組織の強い散乱のために深さ方向に対して位置や大きさの評価(拡散蛍光トモグラフィ)は極めて難しい問題で現在も解決していない。本研究は、入射する光の性質を積極的に制御することによる光の浸達特性の変化を利用し、深さ方向の情報を得る手法の研究である。この結果を利用し、蛍光標識の深さ方向の再構成精度向上を目的とする。具体的には位相特異点あるいは偏光特異点を空間に有するトポロジカル光の一つである光渦に注目した。この光の散乱特性は通常のガウス光と異なると予想され、このことを利用し、散乱体中での深さ方向への浸達特性を変化させ深さ方向の情報を増やし精度を改善する。実際には、トポロジカル光の散乱の性質は明らかではなく、また素過程の散乱から多重散乱になったときにおよぼす影響も明らかではない。これら散乱特性を明らかにして多重散乱体での光伝搬に対する影響を評価し、それを利用して拡散蛍光トモグラフィの改善を実現する。