トポロジカル解析に基づく生体組織の光学構造表現の探索と散乱透視への応用


西村 隆宏  大阪大学大学院工学研究科 助教


研究協力者
下条 裕  大阪公立大学大学院医学研究科 ポスドク研究員
Jirawit Jiracheewee  大阪大学大学院工学研究科・学生(博士前期課程)

生体内の光伝搬計算には,組織を微小球粒子が均質に分布した屈折率分布と仮定し,吸収・散乱係数により記述される多重散乱に基づくモデルが広く利用されている.しかし,組織の微視的な不均質性や光の波動性が考慮されておらず,既存の光伝搬計算に基づく解析による空間分解能は組織スケール(mm-cm)にとどまっている.本研究は,組織の不均質な屈折率分布に対して,トポロジカル解析に基づく光学構造表現を確立し,生体の散乱透視における有効性を明らかにすることを目的とする.具体的には,(1)細胞小器官-細胞-繊維-組織の屈折率分布の構造的特徴をパーシステントホモロジー解析により定量化し,(2)定量化された構造的特徴を有する屈折率分布をランダムに生成する.(3)生成された光学構造データセットと波動方程式による光伝搬計算から散乱透視のための深層学習モデルを構築する.蛍光内視鏡診断で課題となる粘膜組織2mm深さ程度での細胞スケール(数10µm)のイメージングを達成し,本手法の有効性を検証する.