大気揺らぎの中を伝搬するレーザー通信光のTEM波の特性に適した基底モードの解明


山下 泰輝  国立研究開発法人情報通信研究機構 デジタル光学基盤研究室 研究員


レーザー光で高速無線通信を行う空間光通信では,通信光が大気中を伝搬した際に光波が歪み,位相と強度の分布が時間的に変動することが,伝送速度のさらなる高速化や通信装置の小型簡易化を行う上での課題である.現行技術では補償光学などのフィードバックによるアクティブな波面制御により光波の歪みを補正するが,通信装置の設計の観点に立つと,小型簡易化の為にはパッシブな素子で光波の歪みを補正できる事が望ましい.その方法として,光波を位相板により変調し直行基底を成すTEMモードの成分に分解した後に,TEM00モードへ変換する手法が提案されている.この際,複数の横モードの成分を予め仮定し,それらの成分で光波を近似することになるため,光の伝搬経路の特性を考慮してTEMモードを選ぶ必要があり,現在は光波補正の効率に課題がある. そこで本研究では,パッシブな波面補正の光波分解の効率を向上するため,大気中を伝搬した光波の位相と強度の時空間的なデータを実測により収集し,支配的な固有モードを機械学習によって見出す.本研究を通してパッシブで小型簡易な受信光学系でも高速な通信を可能とする基礎を固め,空間光通信装置の構成を刷新することを目指す.