コロイド溶液における光散乱・揺らぎ・物質拡散のマルチフィジックスモデリング


藤井 宏之 北海道大学 工学研究院 助教


本研究の目的は、コロイド溶液における、光の散乱、光の揺らぎ、コロイド粒子の拡散運動に関するマルチフィジックスモデルを構築し、光の揺らぎのメカニズムを統一的に理解することである。「拡散相関分光法」は、光強度の揺らぎを表す時間相関関数を計測することで、生体の血流速やコロイド溶液の拡散係数などの動的特性を非侵襲的・非破壊的に評価することができる。この分光法は媒体によって強く散乱される近赤外波長帯域の光を使用するため、光の散乱、光の揺らぎ、粒子の拡散運動をモデル化する必要がある。先行研究では、この3種類の物理現象が別々にモデル化されている。本研究では、この3種類の物理現象が密接に関係していることに着目し、電磁波理論、輻射(ふく射)輸送論、ブラウン動力学シミュレーションに基づいたマルチフィジックスモデルを構築する。構築したモデルより、時間相関関数などを数値計算し、関連の物理現象における特性時間や特性長を評価する。特性時間や特性長を無次元解析し、光の散乱とコロイド粒子の拡散運動に起因した光の揺らぎのメカニズムについて、普遍性の観点より明らかにする。