散乱体透過条件下での時間分解過渡吸収分光法の開発


太田 薫 神戸大学分子フォトサイエンス研究センター 研究員


生体組織などの光学的に不透明な媒質をレーザーなどのコヒーレント光が透過する際には、多重散乱が起こりある特定の場所に光を効率よく集光することが非常に困難となる。特に、超短パルス光を適用した場合では、試料中での多重散乱により時間特性も大きく変化するため、短い時間幅という特徴を活かした分光計測を行うことが不可能となる。本研究課題では、超短パルス光の波面制御法を応用した時間分解過渡吸収法の開発を目的とする。ここでは、プローブ光の波面制御を行わずに、ポンプ光の波面制御のみで非線形光学信号を観測する手法を開発する。つまり、透過行列(Transmission Matrix)の要素を決定する計測において、ポンプ光のみを用いるため、光学的には線形過程を用いた測定となる。このため、連続発振光を用いた場合と変わらない計測で非線形光学信号を制御することが可能となる。本研究課題を通して、波面制御法を用いた時間分解分光法への応用という新たな方向性を開拓することに挑戦する。