2光子プロトコルによる擾乱透明化イメージングの試み


深津 晋 東京大学大学院 総合文化研究科 広域科学専攻 相関基礎科学系 教授


研究協力者
槻 凌多  東京大学大学院総合文化研究科 大学院生
角谷 聡太 東京大学大学院総合文化研究科 大学院生

 光の伝播経路上の誘電率がゆらぐと光電場の振幅と位相が変化します。すると電場干渉によって取得されるイメージが歪むなどの影響がでます。本研究では、散乱透視に資すべく、この誘電率揺らぎ(以下、擾乱と呼びます)によって生じるイメージ変調の抑制を目指します。ここでは、従来の1光子物理の枠組みを超え、2光子相関を利用することで伝播経路上の誘電率ゆらぎの効果を抑えつつ、無歪で無変調のイメージングを可能にする2光子擾乱透明化プロトコルの開発とその物理実装に取り組みます。相関した多光子の系に特徴的に発現する非自明な効果や非古典的な性質を積極的に利用することで散乱透視の学理と新しいイメージングの技術体系の構築に挑みます。その第一歩として摂動的な擾乱に限定したかたちで検証実験を試みます。初年度には、 2光子干渉および量子エンタングルメント光子対の変調耐性をもつ部分空間を利用した散乱・揺らぎの効果の抑制を目指し、空間ドメインにおける散乱透視への足がかりをつかみます。次年度には、機械学習や圧縮センシング等を利用してデータ欠損を伴う強い擾乱への対策を検討するとともに時間ドメインへの拡張を試みます。