脳領域間の神経細胞活動から発せられる揺らぎによる高次脳機能の透視


加藤 大輔 名古屋大学大学院医学系研究科 機能形態学講座分子細胞学 講師


 高次脳機能は脳領域における局所神経細胞活動が時空間的に制御され、脳領域間の連続的な神経細胞活動を奏でることで作動する。そのためこれらの時空間的な活動制御が障害されると、高次脳機能障害を主症状とする神経精神疾患が発症する。従って、脳領域間の神経細胞活動を正確に評価することは、神経精神疾患の診断や病態進行を予測するバイオマーカーとなるばかりか、治療標的ともなりうる。しかしながら、脳領域間の神経細胞活動を評価するために行われてきた電気生理学的解析は空間分解能が欠如し、レーザー顕微鏡などを用いたイメージング法は時間分解能が低いため、新しい評価法の開発が望まれていた。
 そこで本公募研究では、近年発達した空間光変調素子を用いたホログラフィック技術をレーザー顕微鏡に組み込む。そして、この技術を神経細胞標識法および光遺伝学を用いた細胞活動操作法と組み合わせ、生体動物内で可視化された神経細胞活動から発せられる散乱・揺らぎへ適応することで、脳領域間の神経細胞活動を高精度な時空間分解能で透視する方法を構築し、神経精神疾患の病態解明・治療法開発に必要な新たな糸口を提供することを目的とする