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研究体制 - 細胞工場

[3] 細胞工場 (協働機関 : 展開企業群)

本リサーチエンジンでは、独自のコア技術である「細胞表層工学(微生物にバイオマス分解能力を付与する)」と、「合成生物工学(細胞の“ものづくり”代謝を画期的に強化する)」を用いて、前処理で液化したバイオマスから様々なターゲット化合物を直接、高効率に生産する「細胞工場」をテーラーメイドに創製する技術を確立します。また、その基盤となるシステムズバイオロジー研究を発展させます。実際に、多様なバイオプロダクションに用いる高機能化微生物を創製することで、新たなイノベーションにつなげることを目指します。

細胞表層工学

微生物の細胞表層には多くのタンパク質が局在化しています。細胞表層工学とは、細胞表層局在タンパク質の一部をアンカーとして用い、目的タンパク質と遺伝子レベルで融合して発現させることで、目的タンパク質を細胞表層に集積させる技術です。発酵生産性に優れた微生物自らが、バイオマス分解酵素を生産して細胞表層に集積することにより、細胞表層でバイオマス資源を分解し、分解産物である多様な糖を細胞内に取り込んで、有用なプロダクトを発酵により一気に生産することができます。したがって、前処理バイオマスから目的物質を直接生産できるようになり、低コストかつ競争力の強い物質生産プロセスを創製できます。この技術を用いて酵母、コリネ菌、麹菌、放線菌、大腸菌、乳酸菌など有用物質生産に優れた微生物にバイオマス分解能力を付与し、バイオマスを資化して直接有用物質を生産可能な微生物(細胞工場)を創製します。

合成生物工学

バイオプロダクションのための細胞工場創製において、微生物代謝を飛躍的に向上させるには、これまでの試行錯誤の方法論から、微生物代謝経路の挙動の理解に基づく合理的な方法論へ転換する必要があります。近年飛躍的に発達したシステムズバイオロジー、合成生物学、代謝工学を活用して、微生物の代謝解析、遺伝子の強化や破壊、新たな代謝経路導入を大規模に行ないます。微生物の細胞内代謝は遺伝子レベル,タンパク質レベル,代謝物質レベルで厳密に制御されているため、細胞の“ものづくり”代謝を画期的に強化して目的物質を大量に生産するためには、これらの生体内分子の挙動をシステムとして理解し、工学的に最適化する必要があります。本拠点では、これを合成生物工学として展開してきています。

具体的には、以下の1から5のステップからなるサイクルを回すことにより,微生物をより優れた細胞工場に進化させていくことができます。

  1. in silico代謝シミュレーションによる代謝デザイン戦略の策定 :
    コンピューター上で微生物のゲノムスケールで代謝経路を再現し、遺伝子欠損や過剰発現などの代謝改変の影響をあらかじめ推定。
  2. 遺伝子工学を駆使しての微生物細胞工場の創製 :
    1の戦略に基づいての組換え体の作成。また、作成にあたってのゲノム大規模改変技術の確立。
  3. 微生物による目的生産物の発酵生産性評価 :
    2で創製した組換え体のバイオリアクターレベルでの性能評価。
  4. マルチオミクス解析や代謝フラックス解析による微生物代謝の評価 :
    マルチオミクス解析では、DNA塩基配列(ゲノミクス)、転写産物量(トランスクリプトミクス)、タンパク質量(プロテオミクス)、代謝物量(メタボロミクス)を網羅的に解析して、統合することで細胞の状態を解析。一方代謝フラックス解析では生体試料に安定同位体基質(13Cなどで標識されたもの)を取り込ませ,質量分析計などを用いてその標識率を観測していくことで、代謝の流れを定量化。
  5. 微生物代謝データを用いてのin silico代謝シミュレーション等による律速段階の同定と改変ターゲット遺伝子の決定:例えば、メタボロミクスと代謝フラックス解析を統合することで,細胞内代謝反応を網羅的かつ定量的に把握し、律速段階となる代謝反応を推定。

この基盤技術を活用して、展開企業と協働で様々なターゲット化合物を高効率に生産する細胞工場をテーラーメードで創製します。

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